新刊 サトウタツヤ・若林宏輔・木戸彩恵『社会と向き合う心理学』
サトウタツヤ・若林宏輔・木戸彩恵 編
社会と向き合う心理学
A5判並製340頁・予価2940円
発売日 12.09.25
ISBN 978-4-7885-1305-1
見本出来ました。9月25日配本です。9月28日ごろ書店に並びます。
序章 この本が伝えたいこと
1 この本が伝えたい「心の仕組みを知ること」の大切さ
この本は,私たちが社会と向き合い,生きていくうえで大切な心理学について書かれています。伝えたいことが2つあります。まず第一に,心理学の内容です。もう1つは,もっと根本的なことですが,私たちの行動の仕組みを知ることによって,1人ひとりがより良く生きてほしいということです。ここで「良く」という価値が語られますが,私たちがイメージする「良い」とは,「人が生きていくことを邪魔されない」「理不尽に生命を奪われない」ということを根本に置く「良さ」です。このことを逆から表現すると,「誰かに人生を邪魔される人がいる」し,「理不尽にも生命を奪われている人がいる」ということです。
この本の読者の多くは思春期の方でしょうから,その例をあげてみましょう(思春期が終わった方は,甘酸っぱい思い出として思い起こしてください)。
同じクラスにいるクラスメート,自分より可愛くて(頭が良くて,でも,手先が器用で,でも何でもいいのですが)人気があるから,ちょっと懲らしめてやろう。 自分が好きな人,それなのに,全然振り向いてくれない。きっと自分のことを知らないからだろう。もっと自分のことを知ってほしいのに,相手にもされない。チクショー,自分が苦しいのはアイツのせいだ,アイツさえ居なければ私(オレ・アタシ)はもっと楽になるはずだ。消してしまえ。
このような気持ちは,人生のうちで一度くらいは胸に沸き起こる邪念だと思います。そして,こうした思いがあったとしても,何とか堪えて,日々を送っているのだと思います。しかし,なかには,そのバランスが崩れて,人を中傷したり,本当に傷つけたりしてしまう人もいます。
自分の思いにとらわれて人を憎み続けたり,その結果として相手の人が傷つけられたりするなら,本当に不幸なことです。こうした行動も,人の心の仕組みに沿って行われているのです。ですから,そうした仕組みを知ることによって,不幸な結末を少しでも少なくできればと思います。
一昔前の心理学のテキストには「心理学は行動の科学である。行動を記述し制御し予測する学問である」というようなことが書かれていましたが,その目的については書かれていませんでした。ですから,心理学者の知見が,他国を侵略するための政治に使われてしまったりしたのです。心理学が科学であると威張ったところで,それが用いられて人が死んでいるのでは,何のための学問なのか疑問です。手塚治虫の有名なマンガ『鉄腕アトム』ではないですが,原子力は平和利用のみ,というような指針こそが重要なのだと思われます(ちなみに,日本の科学者・技術者がロボットを含む科学技術の軍事利用に消極的なのは,『鉄腕アトム』の影響が大きいといわれています)。
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