新刊 日本発達心理学会、根ヶ山光一・仲真紀子『発達の基盤:身体、認知、情動』
日本発達心理学会 編、根ヶ山光一・仲真紀子 責任編集
発達の基盤:身体、認知、情動
A5判上製336頁・定価3780円
発売日 12.09.20
ISBN 978-4-7885-1302-0
見本出来ました。9月12日配本です。9月14日ごろ書店に並びます。
序章
生物は時間軸にそって変化する存在であり,発達とはその変化に対する一つのとらえ方である。時間的変化のもっとも大きな枠組みは「進化(系統発生)」であ り,そこでの変化は種の誕生から滅亡までの過程としてとらえられる。ついで,社会レベルにおける体制の誕生から滅亡までのうねりが存在し,その変化を私た ちは「歴史」と呼ぶ。この本のテーマである発達は,個体の生から死までの変化過程である。ただしその個体レベルの変化は,進化的変化とも歴史的変化とも独 立ではない。
このハンドブックのシリーズは,そういった個体レベルの発達を,発達心理学という窓を通して多面的に考察するという企画である。そこでいう発達が進化や 歴史の枠組みと関連し,いわば異なる時間の入れ子構造を呈するということは,言いかえれば発達に種差や民族差・時代差があり,それが生活文脈としての生態 学的環境や文化・社会的環境に規定されているということである。その入れ子構造の全貌を考察することが,発達科学の究極の課題であろう。本書はそのような 課題の中で,環境と生活体の関連性の中に発達の基盤を求めてみようとする試みである。
本書の大きな特徴として生物学的視点があり,その具体的な切り口として「身体」への注目がある。それは身体が,発達だけでなく進化や歴史の枠組みとも重 なる切り口だからである。ここで,生物として生きるということの原点は環境と身体間で資源のやりとりを行うことであり,そのやりとりを媒介するのが心であ ると割り切ってみよう。そのように考えれば,身体は心の発達に枠組みを与えるし,また心が身体を支えているともいえる。たとえば,食は環境資源を身体資源 に変換することであるが,それは身体と心の出会う場の現象である。また子どもの好奇心は生活環境の拡大をもたらすが,それは同時に事故という身体上のリス クももっている。あるいは,触れ合いという言葉は,心理的意味と同時に身体的意味も併せもつ。・・・・・・
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