新刊 前川啓治『カルチュラル・インターフェースの人類学』
前川啓治 著
カルチュラル・インターフェースの人類学
A5判264頁・定価2520円
発売日 12.08.20
ISBN 978-4-7885-1301-3
見本出来ました。8月21日配本です。8月23日ごろ書店に並びます。
おわりに
自省することは人類学者の重要な能力の一つであるが、オリエンタリズム批判以降の人類学の一部は、問いを民族誌における表象の問題に矮小化してきた。その 結果が、民族誌の書き方という特定化した問題になってしまった。「ライティング・カルチャー・ショック」というものは、あくまで民族誌の表象という限定さ れた範囲における根本的な見直しではあるが、それはフィールドから理論に至るまでの人類学の実践の一部にすぎない。(メタレベルからの批評としてではな く、)フィールドワークの実践においてこそ、われわれは自省しなければならないのではないか。
人類学者が一般的に嫌うのは、超越的な視点である。なぜなら、権威や権力がその背景に付随してくるからである。超越的な立場からの批評ではなく、葛藤を 含む現実のインターフェースの絡み合いのなかで、超越論的な取り組みによって、つまり同時に内と外に位置するところから、同時に他者構築と自己構築を行 なってゆくことこそが、人類学者の原実践である。
人類学の成果は百花繚乱という様相を呈している。まさにポスト・モダンといわれる知の状況に呼応して、人類学は多様になってきている。人類学がなんでも ありの学問になってゆくのか、人類学のスピリットとでもいうべきものを維持し、そのなかから発展的に対象を拡げ、対象を深め、時代状況に応じた展開を目指 してゆくのか、まさにその岐路に立っていると編者には思われる。本書の各章で展開された諸論は、いずれも現代の人類学の主要なテーマを取り扱っており、今 後のアプローチの方向を示すものである。・・・・・・
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