新刊 日本記号学会 編 ひとはなぜ裁きたがるのか
日本記号学会 編
ひとはなぜ裁きたがるのか
――判定の記号論
12.05.18
978-4-7885-1294-8
A5判244頁・定価 本体2800円+税 の見本ができました。配本日は5月16日、書店発売日は18日です。
あとがき
二年以上前、本書のもとになった学会年次大会に「判定の記号論」というタイトルをつけ、その内容を構想していた時分には、メディアがここまで「判定」に溢 れるとは予想していなかった。もちろん、裁判員制度や事業仕分け、そしてスポーツの判定など、ある意味で、判定のスペクタクルとしてメディアで消費される 事象を本書の射程に入れてはいた。しかし、それとは比較にならない、これほどの規模と速度で「判定の洪水」が起きるとは、当然ながら予測不可能だった。災 害後、いわゆる専門家、評論家、批評家たちがメディアに登場して過剰に言説を紡ぎ、それをもとにさらなる言説の波が押し寄せ、それらが悲惨な映像と混ざり 合ってある意味での濁流となり、その流れが私たちの判断を揺るがし、私たちの感情を根こそぎ押し流していったという事態。こうした事態、あるいはその余波 は現在も終息せずにつづいている。津波という洪水の映像をメディアの「洪水」はトラウマ的に際限なく反復し、私たちをそのショックに対して麻痺させもした し、さらにその後には、災害後の「何も残っていない」という意味での不在の映像の流れが私たちを取り囲みもしたし、堰を切ったようにやり場のないひとびと の情動がそこに断続的に注ぎこまれたことも、記憶には新しい。そして、そこで何かしら言葉にしがたい抑圧や、逆に何かを抑圧のうえで言葉にしなければいけ ない雰囲気が醸成されているというのも、否定しがたい事実かもしれない。こうした事態を「判定の洪水」とひとまず呼んでおく。
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