新刊 安田 雪 著 『ワードマップ パーソナルネットワーク』
安田 雪 著
ワードマップ パーソナルネットワーク
──人のつながりがもたらすもの
の見本ができました。配本日は7月26日。書店さん店頭には28日、29日頃ならびます
11.07.20 978-4-7885-1246-7 46判296頁・本体2400円+税
まえがき
優れた友人との出会いは、人生を豊かにします。あたたかな恋愛関係は人に幸せをもたらします。相性の悪い先生は勉強意欲を低下させますし、気の合う友人は日常生活に豊かさをもたらします。人間関係は人を支えもすれば、傷つけもします。他人は、精神的な安定や知識を与えてくれることもあれば、いらだちや絶望をもたらすこともあります。
ネットワークが、人々の思考や行動に大きな影響力を及ぼすことは、前著『ワードマップ ネットワーク分析――何が行為を決定するか』で論じました。ネットワーク分析の分野は急速な進展を遂げました。分析対象のネットワークの規模と種類、解析技術、数学的・物理的基礎理論、応用領域では社会科学どころか、自然科学、人文科学、工学の領域まで、独自の応用研究が進み、百花繚乱とも言える状態が続いています。
本書では、パーソナルネットワーク、つまり人々のつながりに特化して、そのありかたと影響力を考えてみます。ネットワーク分析の守備範囲は人間以外をも含みますが、組織や国家など、個々人を超えた集合体が形成するネットワークは扱わず、パーソナルネットワーク以外の企業や産業のネットワークについては別の機会に論じたいと思います。
生物の食物連鎖のネットワークやDNAの連鎖構造といったミクロ・レベルのネットワーク解析も、近年著しく発展していますので、これらの新しい分野から何が学べるかについては触れるつもりです。ただ、本書では、「意識や感情をもった人間」を最小の構成要素とする、パーソナルネットワークにテーマを限定します。
網羅的とはいえませんが、幅広くパーソナルネットワークに関わる論点、未解決な問題、応用可能性に満ちた指標、設計上の課題などをすこしずつ取り上げてみました。関係情報の認知、活用、商品化、他者と共存していくしくみや制度の設計、倫理と可能性まで、従来のネットワーク分析をこえた議論も展開しています。章の順番にこだわらず、関心をもてるところから自由にお読み下さい。
本書の校正が進行中に、東北地方に大地震とそれに伴う大津波が発生し、未曾有の被害をもたらしました。人とのかかわりの重さとはかなさを、これほど痛切に、私たちが感じたことがあったでしょうか。傷ついた地域、経済、日本の復興のために、これから必要なのは技術と知識です。学生諸君、研究者のかたがた、若い世代の技術と知識が、今後の日本再建を支えます。勉強しましょう。
本書が、より良き人間関係、組織と地域の再生の一助になればこれ以上の喜びはありません。
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