書評 佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留 著『本を生みだす力』
佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留 著
『本を生みだす力』の書評が2011年4月24日朝日新聞に掲載されました。
評者は辻篤子氏。
・・・・・・本書は、東京大学出版会や有斐閣など専門書を出版する4社を例に「知の門衛」としての役割を詳細に分析し、欧米との比較も通して、「学術コミュニケーションの危機」に切り込んでいる。・・・・・・本書の分析は、日本独特の文化状況をも浮かび上がらせる。学術のありようにも示唆を与える労作である
4月3日付日本経済新聞「活字の海で」にてもご紹介いただきました。記事は堀篤史氏。
「どんな本を出すべきか 問われる「門衛」の選択」
・・・・・・ところで一冊の本はどのように生まれるのか? これまでは、目利きで才能あふれる書き手を発掘し、育てる「伝説の編集者」の物語が注目されてきた。それに対し、佐藤郁哉ほか著『本を生み出す力』(新曜社)は、組織としての出版社に焦点を定め、「知の門衛」としての働きを明らかにする新鮮な研究書だ。
ハーベスト社、新曜社、有斐閣、東京大学出版会という、歴史も成り立ちも違う学術出版社のケーススタディが本書の中核を成す。各社の歴史を〈文化〉と〈商業〉、〈職人性〉と〈官僚制〉という対立軸に当てはめ、その中で模索を続けながら揺れ動く出版社の姿を描き出す・・・・・・
4月8日付週刊読書人にて書評掲載されました、評者は長谷川一氏
・・・・・・日本的な学術出版の特徴を、米国との対照をとおして把握しなおしている。「舶来」の制度導入にも慎重な姿勢を示すなど、その考察は公平である。周知のとおり、日本では学術書出版は一般書出版と混淆するある種の曖昧さのなかで成立してきた。今後のデザインを語るうえでも、その文脈を抜かすことは出来ない。アカデミーであれ出版であれ、それ自体が社会に埋め込まれて作動しているのだから。
第II部の事例研究が興味深い。対象となる四社は、それぞれ異なる性格や成り立ちをしているとはいえ、いずれも人文・社会科学系版元としてすでに地歩を有し、同時に著者陣とも縁浅からぬ関係にある版元だ。出版編集活動に関する従来の言説は、業界内部者による手柄話や自説開陳という傾向が強く、その具体的な様相は判然としなかった。それにたいし、折り目正しい社会学的な手法によって実証的に言葉が与えられたという点が、最大の功績である。今後の基本文献のひとつとなるだろう・・・・・・
ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者の方に心よりお礼申し上げます。
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