新刊 岡本依子『妊娠期から乳幼児期における親への移行』
岡本依子 著
妊娠期から乳幼児期における親への移行
―親子のやりとりを通して発達する親
A5判上製248頁
定価:本体3400円+税
発売日 16.02.18
ISBN 978-4-7885-1463-8
見本出来ました。
2月18日ごろ書店に並びます。
はじめから親だった人はいない。にもかかわらず,子どもの立場から親をみるとき,親は自身が生まれたときから親であったため,あるいは,最古の昔からヒ トが子を産み育ててきたという不断の営みを知っているため,親ははじめから親だったように錯覚してしまう。ポルトマンも指摘するように,人は生理的早産で 生まれる動物であり,子宮外の胎児といわれるほど親への独特な依存性を示す(Portmann, 1951/1961)。これはつまり,人の乳児は未成熟な状態で生まれてくるので,生まれ落ちたあと,自力で生命を維持することが困難であることを示して いる。出産後には乳児は子宮の外にいることになるが,胎児と同じくらい保護された環境が必要であるということである。つまり,ポルトマンの説に従うなら, ヒトは,大人からの世話や保護,すなわち子育てを前提に進化してきた動物であることを示している。したがって,ヒトにとって子育ては自然の摂理といえるか もしれない。
系統発生的時間軸において自然の営みである子育てが繰り返されてきたが,そのことと,一個人として,ある時代のあるコミュニティに暮らす親にとって,個 人史的時間軸における親への移行が当然のものと感じられるかどうかは別である。子育てが当然視され,その背後にある親個人の努力や工夫が焦点化されないこ ともある。自身が親となったとき,親への移行のプロセスにおいて予想しなかった違和感を抱く人がいるのは,このような感覚のなかで育つことによって,親の 絶対視に疑問をもつ機会がないままそれまでの人生を歩んできたせいかもしれない。・・・・・・
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