書評 金菱清 著 震災メメントモリ 共同通信配信 8月3日 2014年
金菱清 著 震災メメントモリ の書評が、 8月3日、共同通信配信にて、中國新聞ほか掲載されました。評者は若松英輔氏。ご書評いただきました先生ほか、掲載紙、掲載紙ご担当者様にはこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
……社会学者として被災地にあって著者は、苦しむ人々を傍観し、観察したりはしない。解析する前に寄り添おうとする。遺族たちとの対話を繰り広げるなかで彼は、死者の存在を黙殺したままではもう、一歩も進めないところに来ていることを実感する。むしろ、死者の問題は遺族にとって最優先の問題だったことに気が付く。
……震災は問題を生んだのではない。露呈したのである、という思いが本書を貫いている。著者は実践的かつ実証的な態度を崩さない。震災以前の被災地の状況を歴史的に踏まえつつ、地域共同体、祭り、偽りの産業振興といった問題を論じる。これらの営みと死者を語ることは矛盾しない。
また、被災者が精神の平安を取り戻すための具体的な方法として「書く」こと(=記録筆記法)に言及されているのはきわめて意義深い。人は誰も自らを慰め、励まし、ときに救う言葉を、すでに内に秘めている。「書く」とは、それらの言葉を自分の中に発見する行為でもあるからだ。
……この本の内実は震災の詩学というべきである。詩学とは、人間の魂のうめきに秘められた意味をどこまでも追及しようとする態度をいう。
良書である。長く、真摯な営みに裏打ちされた、希少な好著である
金菱清 著
震災メメントモリ
四六判上製240頁
定価:本体2400円+税
発売日 14.6.20
ISBN 978-4-7885-1389-1
掲載紙、中國新聞、秋田魁新聞、髙知新聞、福島民友、北國新聞、福島民報(8・2付)、徳島新聞、南日本新聞ほか
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