« 新刊 マーク・フリーマン『後知恵』 | トップページ | 書評 中山元著『ハンナ・アレント〈世界への愛〉』 »

2014年1月22日 (水)

書評 島村恭則 編 引揚者の戦後

9784788513334

島村恭則 編

引揚者の戦後

四六判400頁・定価3465円
発売日 13.8.15
ISBN 978-4-7885-1333-4

の書評が、図書新聞2014年1月11日号に掲載されました。
評者は野上 元氏。

……本書『引揚者の戦後』は、そこに注目する論文集である。編者である島村恭則が第1章「引揚者が生みだした社会空間と文化」において数多くの事例を紹介しながら指摘したように、「引揚者の世界は、まさに『現在』という地表面のすぐ真下に高密度で広範に横たわる歴史的地層のごときものである」。

この指摘が何よりも重要であるし、その探求の必要性については、より広い理論的な枠組み、すなわち引揚げを「移民研究の中で相対化した場合、どのような視座が得られるか」という論点から整理してくれる第8章の辻輝之論文「戦後引揚げという〈方法〉――帰還移民研究への視座」の指摘が重要である。すなわち、「『引揚げ』というラベルが『固有名詞』化したのは、『等価』だが、『異なる』歴史体験、記憶の提示、帰国前の生活様式の再生産といった『抵抗』による意図せざる協働の結果である」。

引揚者=「帰還日本人」という「異種性」が、「日本人の境界」の調整にどのように作動したのかを観察しようという研究の理論的射程が提起される。このような視座は、引揚げをめぐる神話を理論的に脱本質化してくれることもするだろう。

一方で(それでも)評者としては、本書がもたらす、学術的な研究書でありながらもどこか血が騒ぐような読書経験についてもう少し考えてみたいと思った。篠原徹による自分史にもなっている第2章「記憶のなかの満州引揚者家族の精神生活誌」をはじめとする各章の探求は、各所でそれを与えてくれる。既にもう私たちは引揚者をめぐる神話を踏まえて生きているのだとすれば、そうした想像力からスタートして考えてもいいように思うのである……

これもまた全文をご紹介したいすごい書評です。
評者の先生、掲載紙ご担当者に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

|

« 新刊 マーク・フリーマン『後知恵』 | トップページ | 書評 中山元著『ハンナ・アレント〈世界への愛〉』 »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/191157/58983621

この記事へのトラックバック一覧です: 書評 島村恭則 編 引揚者の戦後:

« 新刊 マーク・フリーマン『後知恵』 | トップページ | 書評 中山元著『ハンナ・アレント〈世界への愛〉』 »