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2014年1月

2014年1月31日 (金)

書評 中山元著『ハンナ・アレント〈世界への愛〉』

9784788513419

中山 元 著

ハンナ・アレント〈世界への愛〉

A5判上製520頁・定価5985円
発売日 13.10.25
ISBN 978-4-7885-1341-9

の書評が、1月31日号 2014年 週刊読書人に掲載されました。
評者は高田宏史氏。

……本書は二部構成を採用している。第一部は、アレントの視点を通した西洋政治思想史の再解釈である。アレントの思想史解釈に従い、古典古代から近代にいたる西洋政治思想史の伝統が、必然的な結末でないにしても、全体主義を将来するにいたったその理路を、本書は見事に整理している。

第二部では、アレントのアイデンティティを、彼女の自己認識に従って「ユダヤ人女性」として定位しながら、全体主義に抗う「新たな公的領域の構築の可能性」をめぐる苦闘を彼女の著作に寄り添いつつ丹念に読み解いていく。本書の明らかな特徴であり美点は、アレント自身の書いたものによりアレントの思想の全体像を構築しようとしている点である。アレント自身の著作は独特の晦渋さがあり一般読者には容易に近寄りがたい。また、彼女の広範囲にわたる著述活動のゆえ、各著作相互の関係は簡単に見通すことができないほど複雑である。本書はこうした難解なアレントの思想のテクストとコンテクストに、彼女自身の言葉を再構成することで明快な見通しを与えている。本書の「終わりに」において、引用だけで一冊の本を作り上げようとしたベンヤミンの試み――この試みはアレント自身も注目し、その方法を海に沈んだ「失われた宝」を探し求める「真珠採り」にたとえている――への言及がある。その意味でいえば、本書もまたアレントの思想の解明を通じて西洋政治思想史の伝統の中の「失われた宝」を取り出そうとする試みであると言えるだろう。

では、そこで取り出されるべき「失われた宝」とは何であるのか。……

評者の先生、掲載紙ご担当者さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

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2014年1月22日 (水)

書評 島村恭則 編 引揚者の戦後

9784788513334

島村恭則 編

引揚者の戦後

四六判400頁・定価3465円
発売日 13.8.15
ISBN 978-4-7885-1333-4

の書評が、図書新聞2014年1月11日号に掲載されました。
評者は野上 元氏。

……本書『引揚者の戦後』は、そこに注目する論文集である。編者である島村恭則が第1章「引揚者が生みだした社会空間と文化」において数多くの事例を紹介しながら指摘したように、「引揚者の世界は、まさに『現在』という地表面のすぐ真下に高密度で広範に横たわる歴史的地層のごときものである」。

この指摘が何よりも重要であるし、その探求の必要性については、より広い理論的な枠組み、すなわち引揚げを「移民研究の中で相対化した場合、どのような視座が得られるか」という論点から整理してくれる第8章の辻輝之論文「戦後引揚げという〈方法〉――帰還移民研究への視座」の指摘が重要である。すなわち、「『引揚げ』というラベルが『固有名詞』化したのは、『等価』だが、『異なる』歴史体験、記憶の提示、帰国前の生活様式の再生産といった『抵抗』による意図せざる協働の結果である」。

引揚者=「帰還日本人」という「異種性」が、「日本人の境界」の調整にどのように作動したのかを観察しようという研究の理論的射程が提起される。このような視座は、引揚げをめぐる神話を理論的に脱本質化してくれることもするだろう。

一方で(それでも)評者としては、本書がもたらす、学術的な研究書でありながらもどこか血が騒ぐような読書経験についてもう少し考えてみたいと思った。篠原徹による自分史にもなっている第2章「記憶のなかの満州引揚者家族の精神生活誌」をはじめとする各章の探求は、各所でそれを与えてくれる。既にもう私たちは引揚者をめぐる神話を踏まえて生きているのだとすれば、そうした想像力からスタートして考えてもいいように思うのである……

これもまた全文をご紹介したいすごい書評です。
評者の先生、掲載紙ご担当者に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

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2014年1月20日 (月)

新刊 マーク・フリーマン『後知恵』

9784788513686

マーク・フリーマン 著/鈴木聡志 訳

後知恵

四六判上製296頁・定価:本体3200円+税
発売日 14.1.20
ISBN 978-4-7885-1368-6

見本出来ました。1月23日配本です。

1月27日ごろ書店に並びます。

日本語版へのまえがき

 まずは『後知恵――過去を振り返ることの希望と危うさ』を鈴木聡志氏が訳されたことに感謝を述べたい。私は日本語がわからないので、彼の翻訳が優れてい るのかどうかは知りようがない! けれども、氏からの質問の数々や翻訳過程を通して示された配慮から判断するに、私は彼の仕事が素晴らしいことを確信し、 彼の仕事に深く感謝する。

 このまえがきは私にとって、『後知恵』を「公式に」振り返る最初の機会になる。おそらく、言うまでもなく、このプロセスは希望と危うさ、両方を伴う。確 かに、自分の仕事を振り返るというプロセスは、本書の中心部にある諸問題のいくつかを調べるのにふさわしい。まず危うさの方から始めさせていただきたい。 第一に、そして最も基本的なことだが、明白な誤りがいくつかあった。これらに気づかなかったとは、どうしたことか?(と私は自問した)。答えは実にはっき りしている。長い時間をかけて本や論文を書き、何度も何度も読み直した後では、細部への注意力が衰弱することがある。人はそこにあるものではなく、見たい ものを見るのだ。

    ・・・・・・

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2014年1月18日 (土)

紹介 八木宏美著『違和感のイタリア』

9784788511231

八木宏美 著

『違和感のイタリア――人文学的観察記』
08.9.1
ISBN 978-4-7885-1123-1
46判304頁・定価2835円

2014年1月7日付産経新聞「産経抄」、ベルルスコーニ元首相、ACミラン、本田圭佑についての軽妙なエッセイのなかで取り上げられました。お礼申し上げます。


 
「産経抄」より
イタリア滞在歴30年を超える八木宏美さんによると、この国はあらゆる場面で、「違和感」を突きつけてくる。最初に受けたカルチャーショックは、到着直後に読んだイソップ物語だった。ライオンは捕まえたネズミを食べようとするが、命乞いを受け入れ逃がしてやる。何日かして罠にかかって動けなくなったライオンを、救い出したのはネズミだった。「ライオンとねずみ」を読んだ日本人の多くが、「情けはひとのためならず」のことわざを思い出すはずだ。イタリア人の解釈は違う。一見無害そうな人物でも思わぬ能力を発揮することがあるから、油断するな、というのだ(『違和感のイタリア』新曜社)・・・・・・。

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2014年1月16日 (木)

新刊  帯刀益夫『遺伝子と文化選択』

9784788513679

帯刀益夫 著

遺伝子と文化選択

四六判上製264頁・定価:本体2600円+税
発売日 14.1.15
ISBN 978-4-7885-1367-9

見本出来ました。1月17日配本です。

1月21日ごろ書店に並びます。

はじめに

 われわれ現代人の毎日の生活は、そのほとんどが、人間が作り出したものに依存しています。都会での生活を考えてみましょう。朝起きて食事をして、自転車 で、自家用車で、バスで、あるいは電車で職場や学校へ出かけます。そこでは、書物を読み、パソコンを使い、工場では機械を操作して新しい製品を大量に生産 します。農業や漁業のように自然と付き合っている人々も、人間が作り出した機械を使わずに活動することはないでしょう。また、人々のお互いの付き合いは多 様な社会組織を形成し、われわれは他の人々と形成する社会に依存せずに生きることはできません。

 都会の生活の中でたまには窓の外を見て、遠くの山々や海を眺め、また鳥が飛んでいるのを、木々の緑が深まるのを見て安らぎを覚えたりしますが、自然や他の生き物に依存して生存しているという実感をもつことはたいへん少ないのではないでしょうか。

    ・・・・・・

《もっと読む 遺伝子と文化選択 はじめに》

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2014年1月10日 (金)

新刊 中村桂子『変わる』

9784788513648

中村桂子 編集

変わる

A5判変型並製273頁・定価:本体1905円+税
発売日 14.1.15
ISBN 978-4-7885-1364-8

見本出来ました。1月15日配本です。

1月20日ごろ書店に並びます。

はじめに

「変わる」。昨年が「遊ぶ」と少々変化球でしたので、今年は思い切って直球で行こうと「変わる」にしました。

 日常生活で接する生きものは、みごとな変化で存在感を示します。通勤路の桜並木がいっせいに花を開くと街の様子が変わり、通り過ぎる人々もいつもより晴 れやかな顔になります。可愛かった男の子がいつの間にかたくましい青年になっていて驚くこともよくあります。これほどの変化でなくとも、人間も動物も植物 も日々変わっていくところに面白さがあると言えるでしょう。

 ところで、科学は本来変わらないものを求め、普遍的な法則を探るものですから、生きものにもそれを求めました。難しい作業でしたが、細胞とその中にある DNAの発見が、地球上のすべての生きものは基本的には同じはたらき方をしており、祖先を同じくしていると考えてよいことを明らかにしました。そこで科学 は、モデル生物を用いて生命現象を支える普遍的メカニズムを研究してきたのです。楽しい作業です。

    ・・・・・・

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2014年1月 9日 (木)

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます

2014newyear

2014年、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年の干支、午にちなんだものがなにかないかということで、探していたところ、自宅の卓上からこんな切手がポロリとでてきました。

少々不鮮明なのですが、上の部分には
「ADVENTURE OF BARON MUNCHHAUSEN」という英文があります。また下の部分にはなんとなくアラビア語を思わせる語、「10Dh」というのがこの切手の価格で、Dhを調べると「ディルハム」、アラブ首長国連邦の切手であることがわかりました。

さきの英文ですが、これは、ミュンヒハウゼンというと「ミュンヒハウゼン症候群」のミュンヒハウゼンかしら? バロンというと、男爵。ミュンヒハウゼン男爵、すなわち「ほら吹き男爵の冒険」の男爵です(このミュンヒハウゼン男爵は、実在の歴史上の人物です)。

この切手のなかの馬の半分はないので、水をいくら飲んでも、外に出て行ってしまいます。「ほら吹き男爵の冒険」のなかにこんな逸話があるのでしょうか。そしてなぜこれがアラブ首長国連邦の切手に使われているのでしょうか? 謎解きのために近いうち『ほら吹き男爵の冒険』を読み直してみることにしましょう。

さてここで思い出したのがテリー・ギリアム監督の映画「バロン」です。この映画は『冒険』をもとにしています。映画上映当時、かなり高額な製作費で話題になって、興行はそれほど成功したとは言えない映画だったかと思いますが、こちらもまた観なおしてみたくなるほんとうにいい映画です。信じて開けてみなさい、そうすれば・・・・・・、そんな最後のシーンが感動的です。

ということで、今年も本の力を信じて開いてみる、そんな一年にしたいと思います。(N)


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2014年1月 6日 (月)

書評 ヴァカン 『ボディ&ソウル』

9784788513198

ロイック・ヴァカン 著
田中研之輔・倉島哲・石岡丈昇 訳

ボディ&ソウル

四六判上製416頁・定価4515円
発売日 13.2.1
ISBN 978-4-7885-1319-8

の紹介が、12月29日付 日本経済新聞書評欄回顧2013 私の3冊」に掲載されました。評者は藤島大氏。

・・・・・・黒人ゲットーの拳闘ジムにフランス人社会学者が入門、その論考の記録である(本書)も、スポーツを利用して時の潮流に乗る安易さを拒む。当事者かつ観察者の視点は学問の枠を超えてボクシングそれ自体の透徹へと至った・・・・・・

評者の先生に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

評者・藤島氏「今年の3冊」他2点の書籍は、

『教える力』 (井村雅代著、新潮社)

『アナキストサッカーマニュアル』 (ガブリエル・クーン著、現代企画室)

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書評 古田徹也 著『それは私がしたことなのか』

9784788513440

古田徹也 著
それは私がしたことなのか

四六判280頁・定価2520円
発売日 13.8.2
ISBN 978-4-7885-1344-0

が、「朝日新聞」2013/12/29付「書評委員が選ぶ「今年の3点」」にて紹介されました。

評者は萱野稔人氏。

今年でた哲学の本のなかでもっとも推したい本である。行為とは何かという問題を、最新の学問動向を踏まえながら根本的に、それでいて明瞭に論じている。いまだに日本の思想系論壇はフランス現代思想の幻惑のなかであいまいな議論をくりひろげているが、もっとこうした本が読まれるべきだ

萱野稔人先生ご紹介のほか2冊は

『愛国・革命・民主 日本史から世界を考える』 (三谷博著・筑摩選書)

『金融の世界史』 (板谷敏彦著、新潮選書)

萱野先生、掲載紙ご担当者さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。



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