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2013年6月

2013年6月29日 (土)

書評 ヴァカン著 『ボディ&ソウル』

9784788513198_2ロイック・ヴァカン 著
田中研之輔・倉島哲・石岡丈昇 訳

ボディ&ソウル

四六判上製416頁・定価4515円
発売日 13.2.1
ISBN 978-4-7885-1319-8

の書評が、7月6日付 「図書新聞」に掲載されました。評者は好井裕明氏。

……日本では著者はブルデュー社会学の関連で理論的学説的に紹介されることが多いようだが、本書を読む限り、それは一面的であることがわかる。著者も主張しているように、本書は初期シカゴ社会学派からの都市研究に深く根付いている偏見、すなわちゲットーとは欠乏や困窮、貧困による乱雑で無秩序な世界という思い込みを拒絶し、ゲットーそれ自体がもつ豊饒な秩序の世界を明らかにし、ゲットーへの偏見を意味付けていた権力関係や社会的搾取や排斥を明らかにしていく都市下層の生活文化のエスノグラフィーである。また、その目的のために有効な道具として選ばれたボクシングの最も基本的なところは、言語に頼ることなく、無意識のなかで伝達されていく高度な肉体的実践であり、ボクシングというスポーツに固有の技芸がいかに鍛錬を通して人間に習得されていくのかを、できるかぎり詳細にかつ了解可能な記述を試みたスポーツ社会学の優れた形なのである。

……
ところで、日本の社会学では、理論書や思想書、経験的な調査分析書などの翻訳は多いが、こうした優れた質的なモノグラフの翻訳はなかなかなされないものだ。それは、口語や俗語表現がちりばめられた原著を翻訳する難しさもあるからだろう。田中研之輔、倉島哲、石岡丈昇という訳者は、各自の専門領域研究を進める上で、本書を訳出する必然性があったのだと言うが、はるかにそれ以上に本書は訳出される価値があるだろう。優れた訳書を創造された三名の気鋭の社会学研究者に敬意を表したい。

評者の先生、掲載紙ご担当者に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

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2013年6月28日 (金)

編む (生命誌 年刊号) 第47回造本装幀コンクール 入賞

中村桂子 編
JT生命誌研究館発行・新曜社発売 
編む――生命誌年刊号 vol.65-68が、
第47回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞
専門書(人文社会科学・自然科学書等) 部門
を受賞いたしました

東京国際ブックフェア(2013年7月3日-6日)の会場では、その年の応募全作品が展示されています。

9784788512726
生命誌研究館発売  新曜社発行
上野かおる/尾崎閑也(鷺草デザイン事務所)
印刷 泰和印刷
中村桂子 編
JT生命誌研究館発行・新曜社発売 
編む――生命誌年刊号 vol.65-68
A5判278頁 定価2000円
12.02.29  978-4-7885-1272-6

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2013年6月27日 (木)

村上宣寛 著 ハイキング・ハンドブック 著者・紹介文の第2弾

村上宣寛 著 ハイキング・ハンドブック

著者・紹介文の第2弾です。ご一読ください。

 毎年、夏休みはアメリカでハイキングをして過ごしている。冒険家の気質は欠片もない。飛行機に乗るのが嫌だし、アメリカも嫌いだった。英会話はまるでできなかった。一生、日本から出る予定はなかった。それが、ちょっとしたきっかけで、ジョン・ミューア・トレイルを歩いた。縄張り確認行動なのか、同じ場所を何度も訪れる習性がある。その結果、4回も歩いた。

 ジョン・ミューアの影響で、世界に先駆けてアメリカに国立公園が整備された。アメリカはハイキングの先進国である。アメリカに行った後、パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)のハイカーのメーリング・リストに参加した。一日に20~30通が飛び交うメーリング・リストである。全部はとても読みきれないが、PCTを歩く人たちの情報の宝庫である。参加者にはハイキングを始めたばかりの人も多い。スルー・ハイクの経験者が助言を与えるのだが、ほぼすべての事柄に「私の場合は上手くいった」という限定詞が付く。

 個人的に強く感じたのは、人間の精神は個人的経験の奴隷だということだった。自分の体験は語れるのだが、それが一般性のある知識なのか、個人に限定される知識なのか、判断できない。個人的経験や思い込みで、何も問題が起こらなければ、それでよい。しかし、無意味な努力を必死で行うのは時間の浪費だし、怪我や事故のきっかけになる。

 ハイカーや登山者の個人的経験や知恵が完全に間違っているという場合がある。ハイキングや登山に関連する学問領域には、体育学、エルゴニクス、医学、衛生学、被服学、栄養学などがあり、研究が蓄積されている。誰でもPubMedという公開データベースを検索すれば決定的な知識が得られる。

 私はメーリング・リストで議論が起こるたびに、PubMedを検索し、ちょっとした意見を書き込んだ。そのメモがある程度、集まったので、エルゴニクス関連のエッセイを書こうかと思った。ところが、ハンドブック的な物のほうがよいと言われたので、全体を書き下ろした。

 ウィスナルらが2006年に行ったインソール研究は面白い。イギリス空軍の新入兵1205名にソルボ(3ミリ厚)とポロン(発泡ポリエチレン3ミリ厚)とサラン(繊維でできた3ミリ厚)のインソールを無作為にに割当て、8ヵ月間の基礎訓練を行い、下肢の傷害を調査した。その結果、靴に付属の安物のサランと、他の高級インソールの間に差がなかった。これは、ランダム化比較試験の前向き縦断研究と呼ばれる研究デザインで、最も信憑性が高い。インソールはマメ防止とかフィット感の向上には役立つが、結局、怪我防止という観点からは、高級インソールは不要という結論である。

 ストレッチの怪我防止効果について、多くのランダム化比較研究が蓄積している。ハーバートらは2011年に信憑性の高い研究に限定して、メタ分析を行い、統計的な総括を行った。結果は非常に明確で、エクササイズの前にストレッチを行う場合、1日後の筋肉痛は100段階尺度で0.5段階減少した。一方、エクササイズの後にストレッチを行う場合、1日後の筋肉痛は100段階尺度で、1段階減少した。この値は誤差範囲で、実質的にストレッチには効果がないという結論である。

 科学は時々、常識を覆す。それは我々の常識が間違っているからである。我々は一度直感的に結論を下すと、その結論をなかなか修正できない。心理学で確証バイアスと呼ばれる現象である。『ハイキング・ハンドブック』は、おそらくエビデンスを意識した、世界で最初のハイキングの本だろう。

9784788513389

村上宣寛 著

ハイキング・ハンドブック

四六判並製320頁・定価2730円
発売日 13.6.4

ISBN 978-4-7885-1338-9
好評発売中です。

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2013年6月26日 (水)

シネマの本棚 日刊ゲンダイ 『暴走族のエスノグラフィー』

日刊ゲンダイ、2013年6月26日付、「シネマの本棚」に

なんと『暴走族のエスノグラフィー』 の紹介がのっており、驚きました。

「シネマの本棚」は知る人ぞ知る、映画紹介の欄のようで、今回は想田和弘監督の映画「選挙2」の紹介がされていました。これは観たくなるなあ、というさすがの紹介です。

「観察映画」とは社会学でいう「参与観察」と同じ。ただし社会学者は言葉で記述するため苦労の質も違う。佐藤郁哉著『暴走族のエスグラフィー』は30年前に京都の暴走族を一年かけて観察した社会学の名作。ひさしぶりに読み返したくなった。

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2013年6月20日 (木)

新刊 稲上 毅『ヴェブレンとその時代』

9784788513402i

稲上 毅 著

ヴェブレンとその時代

A5判上製704頁・定価6720円
発売日 13.6.28
ISBN 978-4-7885-1340-2

見本出来ました。6月25日配本です。

6月27日ごろ書店に並びます。

あとがき

 いま長いヴェブレン踏査を終えて、いくつかのことが脳裏に浮かぶ。

 ヴェブレンはその生涯を通じて、いかなる環境のなかで、いかに生き、いかに思索したか。この本で明らかにしたいと考えたのはこれらのことである。そうすれば、きっとヴェブレン像もいままでよりもっとはっきりしたものになるだろう。

 このうち、「いかに生きたか」に力点をおけば、本書はおのずから評伝という性格をもつ。ヴェブレン伝といえば、ドーフマンの古典がある。本書はその書き 直しをめざしたわけではないが、結果としてそうした性格をもっているかもしれない。ジョルゲンセン夫妻、バートレー夫妻などによる近年の新たなヴェブレン 生活史研究の成果に大いに助けられた。

 そういえば、終始不思議でならないことがあった。ドーフマンはアンドリューから「直接ソースタインに会って聞いてみたらどうですか」といわれていたにも かかわらず、ついにヴェブレンに手紙一通出すことがなかった。もちろん、会ってもいない。この点、E・バラン(Esther Baran)が書いた母親ベッキーについての小さな伝記によれば、「ドーフマンは私(ヴェブレン)の仕事について本を書くだけの学問的力量に欠けている」 といっていたらしい。まだ三〇歳にもならない大学院生の「ヴェブレン伝」であってみれば、ヴェブレンのこの評価はあながち的外れなものではないだろう。 ヴェブレンもまたアンドリューと同じく、ドーフマンの原稿には多くの間違いがあるとみていた。あるいは、ヴェブレンもアンドリューの手許に届いたドーフマ ンの原稿に目を通していたのかもしれない。ヴェブレンは、例の「もうひとつの遺書」にもあるように、「自分についての伝記を書くような企てには、誰のもの であれ、手を貸そうとはしなかった」。

    ・・・・・・

《もっと読む ヴェブレンとその時代 あとがき》

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2013年6月13日 (木)

書評 ヴァカン著 『ボディ&ソウル』

9784788513198

ロイック・ヴァカン 著
田中研之輔・倉島哲・石岡丈昇 訳

ボディ&ソウル

四六判上製416頁・定価4515円
発売日 13.2.1
ISBN 978-4-7885-1319-8

の書評が、6月15日付 「pen」に掲載されました。評者は杉浦大介氏。

日本人が実感するのは難しいかもしれないが、スポーツが貧困を脱するほぼ唯一の手段という地域はいまでも存在する。本書はそんな、いわゆる「ハングリー・スポーツ」の代表格であるボクシングの世界に飛び込んでいったフランス人社会学者のレポート。・・・・・・


『ボディ&ソウル』の最大の魅力も、フランス人の学者がジムの仲間たちと徐々に、人種、国籍を越えた友情を育んでいく過程にある。本書に登場するボクサーたちへの、感情移入を禁じ得ない。・・・・・・

評者の先生、掲載紙ご担当者に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

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2013年6月12日 (水)

ハイキング・ハンドブック 書泉グランデ・2階@神保町

「本売れてるよ」

というお電話をいただき、ご近所の書泉グランデ・2階アウトドア関連書担当の星野さんのところに『ハイキング・ハンドブック』を納品にうかがう。10冊入れて7冊売れとのこと。はじめての登山関連の書籍であること、また関連書籍のなかでは、少々価格が高いので不安でしたが、ひとまずは安心いたしました。

さて5月に本書を紹介したおり、星野さんとはずいぶんお久しぶりの再会で、こちらはやたら親しげに話しかけてしまいましたが、星野さんの記憶に私のことがあったかは不明。手作りのデコイをフェアの飾りにしていた星野さんのコラムはこちらです。

山担・星野のアウトドアコラム

そのさい、ロングトレイル関連の書籍・雑誌を充実させていきたいというお話しや、また「「文庫本を1階におろし、登山関係の棚を移動する予定、ここのところその作業がたいへん」というお話しでしたが、本日お邪魔しますと、棚替えは完了。アウトドア・登山関連本は2階に上がってすぐのところ、登山関連の雑誌を平台で大きく展開したレイアウトが印象的でした。わたしの稚拙な、手作り感満載のポップもつけていていただき、ありがとうございます。

さて書泉グランデさんでは7月、「書泉アウトドア百選〈山編〉 日本流ロングトレイルの楽しみ方」フェアを開催するとのこと、少々早いですがお知らせいたします。ぜひ、お立ち寄りください。

7月・8月の2カ月連続企画!「アウトドア百選」 第一弾は<山編>

開催期間/日時
2013年7月1日(月)~7月31日(水)
取扱店舗 書泉グランデ1階(神保町)

自らも山に登る、書泉グランデ2階アウトドアフロア担当・星野が選ぶ!
ロングトレイル初心者から上級者まで、幅広く役立つ山を楽しむための書籍を集めました!

【次回予告】 8月1日(木)~8月31日(土)
「アウトドア百選」第2弾は [動物編]




9784788513389

村上宣寛 著

ハイキング・ハンドブック

四六判並製320頁・定価2730円
発売日 13.6.4
ISBN 978-4-7885-1338-9

見本出来ました。5月31日配本です。

6月4日ごろ書店に並びます。

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2013年6月 5日 (水)

新刊 ユーリア・エンゲストローム『ノットワークする活動理論』

9784788513471

ユーリア・エンゲストローム 著
山住勝広・山住勝利・蓮見二郎訳

ノットワークする活動理論

四六判上製440頁・定価4935円
発売日 13.6.15
ISBN 978-4-7885-1347-1

見本出来ました。6月5日配本です。

6月7日ごろ書店に並びます。

はじめに

社会科学では、私たちが現象を研究している間にも、その現象は変化してゆく。私たち研究者も研究対象の現象の一部であるから、研究者自身も研究対象の変化とともに変わってゆく。

 私が仕事チームの研究を始めたのは1990年代の初めだった。その試みは約15年続いている。本書は、その旅をふり返るべく構成された。「よきチーム」 とは何かを普遍的に規定しようとする代わりに、私は、仕事チームというものがその組織的・文化的な文脈の中で歴史的にどう変容してゆくかを追跡し分析す る。同時に、私自身の理解が変容してゆくさまも記録する。本書の終盤にかけて、チームという考え方は背景に退き、ノットワーキング (knotworking)、すなわち結び目を結うという新しい考え方が中心に躍り出てくる。

 本書に収められた研究の旅路は、読者を、フィンランド、そしてアメリカ合衆国におけるバラエティーに富んだ仕事場のチームへと連れてゆく。またそれは、学問分野の間、とくに教育、コミュニケーション、組織の研究の間にある境界を超えてゆくものでもある。

    ・・・・・・

《もっと読む ノットワークする活動理論 はじめに》

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