« 新刊 アリス・ミラー『魂の殺人』新装版 | トップページ | 新刊 P. サガード『脳科学革命』 »

2013年1月 9日 (水)

記事  『戦争が遺したもの』 鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二 著

4788508877

鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二 著
『戦争が遺したもの』
――鶴見俊輔に戦後世代が聞く
四六判404頁・定価2940円
ISBN  4-7885-0887-7

1月7日付東京新聞1面「筆洗」に
1月4日韓国で39年ぶりに無罪が確定した韓国の詩人・金芝河氏と鶴見俊輔氏のエピソードが引用されておりました。
          せっかくですので、該当箇所を本文より一部引用いたします。

鶴見 韓国で金芝河が監禁されていた病室まで会いに行ったら、金芝河は驚いた様子だった。なにも知らない日本人が、いきなり現れたんだから。
それで私は、英語でこう言った。「ここに、あなたを死刑にするなという趣旨で、世界中から集めた署名があります」とね。金芝河は日本語はできないし、英語もたいしてできない。だけど彼は、片言の英語でこう言ったんだ。「Your movement can not help me.But I will add my name to it to help your movement」(あなたたちの運動は、私を助けることはできないだろう。しかし私は、あなたたちの運動を助けるために、署名に参加する)。

これはすごい男だと思ったよ。朝鮮人とか韓国人jとか、そういうのを超えて、人間としてすごいと思った。もし私だったら、死刑になりそうになっている自分のところへ、署名をもって外国人がいきなり訪ねてきたら、何が言えるだろう。「サンキュー、サンキュー」ぐらいが関の山でしょう。

しかも彼は英語がそんなにできないから、ほんとうにベイシックな英語だけで、これを言ったんだ。まったく無駄のない、独立した言葉なんだ。詩人だと思ったよ。

それで十数年たって、ようやく彼が釈放されて日本に訪ねてきたとき、彼が京都の私の自宅までやって来たんだ。外でちょっと会ってお礼を言うとか、そういうのじゃ気が済まないって言うんだよ。古い儒教的なマナーなのかもしれないけど、そういう仁義もある人なんだ。

そういう人を相手にしていると、抽象的に朝鮮人を差別してはいけないとか、朝鮮人はかわいそうだとかいうのは、まったく超えてしまうよね。そんなことを考えているこっちのほうが、よっぽどかわいそうなんだ(笑)。この人を死刑にしてはいけないという思いが、朝鮮とか韓国とかを超えてしまうんだよ。
・・・・・・(本書336頁-)

|

« 新刊 アリス・ミラー『魂の殺人』新装版 | トップページ | 新刊 P. サガード『脳科学革命』 »

書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/191157/56503318

この記事へのトラックバック一覧です: 記事  『戦争が遺したもの』 鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二 著 :

« 新刊 アリス・ミラー『魂の殺人』新装版 | トップページ | 新刊 P. サガード『脳科学革命』 »