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2012年9月

2012年9月20日 (木)

新刊  安田裕子『不妊治療者の人生選択』

9784788513044


安田裕子 著
不妊治療者の人生選択

A5判上製304頁・定価3990円
発売日 12.09.20
ISBN 978-4-7885-1304-4

見本出来ました。9月25日配本です。9月28日ごろ書店に並びます。

 はじめに

はじめに  生殖は、人間が存在する限り絶えることのない、種の保存のための自然の営みである。子どもをもちたいという欲求は、社会文化的な影響を受け、住まう地域 によってその特徴に違いがあるにせよ、多くの人がもち合わせているものだろう。不妊はこうした欲求が阻害された状態であり、子どもを産み育てるという、思 い描いていた人生を実現することができないために、不妊の夫婦は2つの重大な危機に直面する。1つは、女性としてあるいは男性として、生理的に備わってい るはずの機能を発揮することができないことによって起こる危機である。とりわけ、幼い頃から思春期・青年期を通して、産む性として自己を 認識してきた多くの女性にとって、子どもをもちたいにもかかわらず妊娠・出産できないということは心理的な危機となる。もう1つは、種の保存という側面と も密接に関連しているが、夫婦や家族の関係性の問題として捉えられる危機である(森 1995)。不妊は、子どもという愛着対象の喪失、アイデンティティ形成への影響、対人関係での葛藤や困難など、種々の問題を生じさせ(Rosen & Rosen, 2005)、個人・夫婦・家族にとって多岐にわたる心理的・発達的危機として経験される。

 不妊治療は、望んでも子どもをもつことができない不妊の夫婦の、希望の拠り所になっている。特に、近年の生殖補助医療技術の高度化・先端化は、自然には 受胎することのできない、あるいは受胎しにくい夫婦の生殖を補助するものとして、重要な役割を果たしている。そして、こうした生殖補助医療技術の発展に伴 い、不妊治療現場における心理的な支援の必要性が指摘されている。筆者は臨床心理学を専門に学んできたが、不妊に悩む女性たちの子どもをもつことへの切な る願いを女性として理解できた。そして、人工的に受胎することの是非という問題を超えて、不妊治療における心理的支援を、単に施術前後の支援として捉える のではなく、女性の人生という生涯発達の中に位置づけて捉えることの必要性と重要性を、強く認識することとなった。本書は、こうした問題意識が筆者の中に 立ち上がってきたことに端を発している。

 不妊治療に通う人々にその経験をお聴かせいただきたいと思いながらも、その場を見つけることができないでいたなかで、治療でも受胎することなく、養子縁 組で子どもをもつことを考えた女性に出会う機会を得た。彼女たちは子どもをもちたいという望みを叶えるために不妊治療に通ったが、結局は受胎しなかった。 しかし、それで諦めるのではなく、子どもを産むことができなくても育てたいと、子どもをもつことにまつわる思いの変化を経験していた。  

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《もっと読む 不妊治療者の人生選択 はじめに》

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2012年9月19日 (水)

新刊  サトウタツヤ・若林宏輔・木戸彩恵『社会と向き合う心理学』

9784788513051


サトウタツヤ・若林宏輔・木戸彩恵 編
社会と向き合う心理学

A5判並製340頁・予価2940円
発売日 12.09.25
ISBN 978-4-7885-1305-1

見本出来ました。9月25日配本です。9月28日ごろ書店に並びます。

  序章 この本が伝えたいこと

 1 この本が伝えたい「心の仕組みを知ること」の大切さ    

この本は,私たちが社会と向き合い,生きていくうえで大切な心理学について書かれています。伝えたいことが2つあります。まず第一に,心理学の内容です。もう1つは,もっと根本的なことですが,私たちの行動の仕組みを知ることによって,1人ひとりがより良く生きてほしいということです。ここで「良く」という価値が語られますが,私たちがイメージする「良い」とは,「人が生きていくことを邪魔されない」「理不尽に生命を奪われない」ということを根本に置く「良さ」です。このことを逆から表現すると,「誰かに人生を邪魔される人がいる」し,「理不尽にも生命を奪われている人がいる」ということです。  

この本の読者の多くは思春期の方でしょうから,その例をあげてみましょう(思春期が終わった方は,甘酸っぱい思い出として思い起こしてください)。  

同じクラスにいるクラスメート,自分より可愛くて(頭が良くて,でも,手先が器用で,でも何でもいいのですが)人気があるから,ちょっと懲らしめてやろう。  自分が好きな人,それなのに,全然振り向いてくれない。きっと自分のことを知らないからだろう。もっと自分のことを知ってほしいのに,相手にもされない。チクショー,自分が苦しいのはアイツのせいだ,アイツさえ居なければ私(オレ・アタシ)はもっと楽になるはずだ。消してしまえ。  

このような気持ちは,人生のうちで一度くらいは胸に沸き起こる邪念だと思います。そして,こうした思いがあったとしても,何とか堪えて,日々を送っているのだと思います。しかし,なかには,そのバランスが崩れて,人を中傷したり,本当に傷つけたりしてしまう人もいます。  

自分の思いにとらわれて人を憎み続けたり,その結果として相手の人が傷つけられたりするなら,本当に不幸なことです。こうした行動も,人の心の仕組みに沿って行われているのです。ですから,そうした仕組みを知ることによって,不幸な結末を少しでも少なくできればと思います。  

一昔前の心理学のテキストには「心理学は行動の科学である。行動を記述し制御し予測する学問である」というようなことが書かれていましたが,その目的については書かれていませんでした。ですから,心理学者の知見が,他国を侵略するための政治に使われてしまったりしたのです。心理学が科学であると威張ったところで,それが用いられて人が死んでいるのでは,何のための学問なのか疑問です。手塚治虫の有名なマンガ『鉄腕アトム』ではないですが,原子力は平和利用のみ,というような指針こそが重要なのだと思われます(ちなみに,日本の科学者・技術者がロボットを含む科学技術の軍事利用に消極的なのは,『鉄腕アトム』の影響が大きいといわれています)。  

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《もっと読む 社会と向き合う心理学 序章》

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2012年9月 6日 (木)

新刊 日本発達心理学会、根ヶ山光一・仲真紀子『発達の基盤:身体、認知、情動』

9784788513020


日本発達心理学会 編、根ヶ山光一・仲真紀子 責任編集
発達の基盤:身体、認知、情動

A5判上製336頁・定価3780円
発売日 12.09.20
ISBN 978-4-7885-1302-0

見本出来ました。9月12日配本です。9月14日ごろ書店に並びます。

  序章 

  生物は時間軸にそって変化する存在であり,発達とはその変化に対する一つのとらえ方である。時間的変化のもっとも大きな枠組みは「進化(系統発生)」であ り,そこでの変化は種の誕生から滅亡までの過程としてとらえられる。ついで,社会レベルにおける体制の誕生から滅亡までのうねりが存在し,その変化を私た ちは「歴史」と呼ぶ。この本のテーマである発達は,個体の生から死までの変化過程である。ただしその個体レベルの変化は,進化的変化とも歴史的変化とも独 立ではない。

 このハンドブックのシリーズは,そういった個体レベルの発達を,発達心理学という窓を通して多面的に考察するという企画である。そこでいう発達が進化や 歴史の枠組みと関連し,いわば異なる時間の入れ子構造を呈するということは,言いかえれば発達に種差や民族差・時代差があり,それが生活文脈としての生態 学的環境や文化・社会的環境に規定されているということである。その入れ子構造の全貌を考察することが,発達科学の究極の課題であろう。本書はそのような 課題の中で,環境と生活体の関連性の中に発達の基盤を求めてみようとする試みである。

 本書の大きな特徴として生物学的視点があり,その具体的な切り口として「身体」への注目がある。それは身体が,発達だけでなく進化や歴史の枠組みとも重 なる切り口だからである。ここで,生物として生きるということの原点は環境と身体間で資源のやりとりを行うことであり,そのやりとりを媒介するのが心であ ると割り切ってみよう。そのように考えれば,身体は心の発達に枠組みを与えるし,また心が身体を支えているともいえる。たとえば,食は環境資源を身体資源 に変換することであるが,それは身体と心の出会う場の現象である。また子どもの好奇心は生活環境の拡大をもたらすが,それは同時に事故という身体上のリス クももっている。あるいは,触れ合いという言葉は,心理的意味と同時に身体的意味も併せもつ。

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《もっと読む 発達の基盤:身体、認知、情動 あとがき》

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2012年9月 5日 (水)

新刊  坂野 登『二つのこころと一つの世界』

9784788512993_2


坂野 登 著
二つのこころと一つの世界

四六判上製240頁・定価2940円
発売日 12.09.09
ISBN 978-4-7885-1299-3

見本出来ました。9月10日配本です。9月13日ごろ書店に並びます。

  あとがき 

  この本はいろいろなことがきっかけとなって生まれた。そのきっかけの第一は、昨年、日本心理学会編集『心理学ワールド』の巻頭言を書くように求められて 考えたことからであった。そこで私がいちばん問題にしたかったことは、いま心理学にいちばん求められているものは何かということである。この問いに対する 答えはさまざまあるだろう。しかしあれこれ考えた末の私の結論は、心理学ではいま、パラダイムのシフトが求められているのではないかということであった。 それは、「知と情の統一的理解」を可能にするパラダイムシフトであると考えた。このようなアイディアを考えるうえで大いに参考になったのは、ヒトを含めた 脊椎動物の左右の身体が、環境に対する対処の仕方で示す違った役割をもっているという、マクネーレージらが提起したアイディアとその証拠であった。私がそ こから導き出したのは、身を守るか攻めるかという緊急的な対処行動のなかから知と情が誕生したという考えである。

 第二のきっかけは、『応用心理学研究』の総説論文、「応用心理学研究の課題と展望」を執筆するなかで考えたことである。心理学のさまざまな領域での研究 方法を振り返るなかで、これまで対立的にとらえられてきた研究法というものは、実はこころのあらわれ方の違いがそこで問題になるのであって、違いを統一的 にとらえる方法があるはずだといった確信をもつようになってきたのである。この確信は、左右の大脳半球のはたらきの違いをもとにして、認知の型を考えよう とする長年の私の研究テーマとその成果から強化されたものである。認知の型つまり利き脳が二つあるとしても、それは大脳半球のはたらきを反映したこころの はたらきの違った側面のあらわれであって、そのもととなる世界は一つであるという考えである。

 このような考えは『教育心理学年報』の展望論文、「脳とこころ」を執筆するなかでさらに確かめられていった。こころのはたらきの基本的な形は、脳のはた らきのなかにあらわれてくるが、その具体的なすがたを、「こころの理論」の脳科学的な基礎を見ようとする研究のなかにこの論文では求めたわけである。ここ ろの理論をもつということが、なぜ右半球と関連づけられることが多いのか、また脳内部での結合性の問題がなぜ自閉症と関係づけられて議論されているのかを 取り上げて議論した。さらに、マクネーレージらによる緊急反応と慣例行動、あるいはゴールドバーグの新奇性と慣例のシステムという考えを紹介し、進化とい う観点から人のこころのあり方について考えていく必要性をまとめとして述べておいた。これらの考えは本書のエピローグに、もう一度まとめ直した形で再現さ れている。

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《もっと読む 二つのこころと一つの世界 あとがき》

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