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2012年3月

2012年3月30日 (金)

「社会脳シリーズ」刊行にあたって   苧阪直行

「社会脳シリーズ」刊行にあたって   苧阪直行

 

脳というわずか1リットル半の小宇宙には、銀河系の星の数に匹敵するほどの膨大な数のニューロンがネットワークを形成し、相互に協調あるいは抑制し合いながら、さまざまな社会的意識を生みだしているが、その脳内表現についてはほとんどわかっていない。

 17世紀、デカルトは方法的懐疑によって、思考する主体としての自己を「われ思うゆえにわれあり」という命題に見出し、心が自己認識のはたらきを もつことを示した。しかし、デカルトは、この命題を「われ思うゆえに社会あり」あるいは「われ思うゆえに他者あり」というフレームにまで拡張したわけでは なかった。自己が社会の中で生かされているなら、それを担う脳もまた社会的存在だといえよう。しかし、自己と他者を結ぶきずなとしての社会意識がどのよう に脳内に表現されているのかを探る気の遠くなる作業は、はじまったばかりである。そして、この作業は実に魅力ある知的冒険でもある。

 脳の研究は20世紀後半から現在に至るまで、その研究を加速させてきたが、それは主として「生物脳(バイオロジカル・ブレイン)」の軸に沿った研 究であったといえる。しかし、21世紀初頭から現在に至る10年間で、研究の潮流はヒトを対象とした「社会脳(ソシアル・ブレイン)」あるいは社会神経科 学を軸とする研究にコペルニクス的転回をとげてきている。社会脳の研究の中核となるコンセプトは心の志向性(intentionality)にある。たと えば目は志向性をもつが、それは視線に他者の意図が隠されているからである。志向性は心の作用を目標に向けて方向づけるものであり、社会の中の自己と他者 をつなぐきずなの基盤ともなる。人類の進化とともに社会脳は、その中心的な担い手である新皮質(とくに前頭葉)のサイズを拡大してきた。霊長類では群れの 社会集団のサイズが脳の新皮質の比率と比例するといわれるが、なかでもヒトの比率は最も大きく、安定した社会的つながりを維持できる集団成員もおよそ 150名になるといわれる(Dumber 2003)。

三人寄れば文殊の知恵というが、この程度の集団成員に達すれば新しい創発的アイデアも生まれやすく、新たな環境への適応も可能になり、社会の複雑化 にも対応できるようになる。一方、社会脳は個々のヒトの発達のなかでも形成される。たとえば、幼児は個人差はあるが、およそ4歳以降に他者の心を理解する ための「心の理論(theory of mind)」をもつことができるようになるといわれるが、これはこの年齢以降に成熟してゆく社会脳の成熟とかかわりがあるといわれる。他者の心を理解した り、他者と共感するためには、他者の意図の推定ができることが必要であるが、このような能力はやはりこの時期にはじまる前頭葉の機能的成熟がかかわるので ある。志向的意識やワーキングメモリがはたらきはじめる時期とも一致するのである。オキシトシンやエンドルフィンなどの分泌性ホルモンも共感を育む脳の成 熟を助け、社会的なきずなを強めたり、安心感をもたらすことで社会脳とかかわることも最近わかってきた。

 社会脳の研究は、このような自己と他者をつなぐきずなである共感がなぜ生まれるのかを社会における人間とは何かという問いを通して考える。たとえ ば共感からどのように笑いや微笑みが生まれるのか、さらにヒトに固有な利他的行為がどのような脳内表現をもつのかにも探求の領域が拡大されてゆくのである (苧阪 2010)。共感とは異なる側面としての自閉症、統合失調症やうつなどの社会性の障害も社会脳の適応不全とかかわることもわかってきた。

 さて、脳科学は理系の学問というのが相場であったが、近年人文社会科学も含めて心と脳のかかわりを再考しようとする動きが活発になってきた。たと えば社会脳の神経基盤を研究しその成果を社会に生かすには、良心や道徳、さらに宗教については神経倫理学(ニューロエシックス)、美しさや芸術的共感につ いては神経美学(ニューロエステティクス)、何かをほしがる心、意思決定や報酬期待については神経経済学(ニューロエコノミックス)、社会的存在としての 心については神経哲学(ニューロフィロソフィー)、ことばとコミュニケーションについては神経言語学(ニューロリンギスチックス)、小説を楽しむ心につい ては神経文学(ニューロリテラチュア)、乳幼児の発達や創造的な学びについては神経発達学(ニューロディベロプメンツ)、加齢については神経加齢学 (ニューロエージング)、社会認知やワーキングメモリについては神経注意学(ニューロアテンション)、さらにこれらの社会脳の成果を近未来的ブレインマシ ンインターフェースで実現する神経社会ロボット学(ニューロソシアルロボティックス)などの新たな学術ルネサンスがその開花をめざして、そのつぼみを膨ら ませている。

驚くべきことに、いずれも「神経」の後に続くのは多くは文系諸学科の名前であり、社会脳研究が理系と文系の学問を橋渡しし、新たな知識の芽生えを準 備する役割をもつことを暗示している。筆者は鋭い理系のクワをもって豊かな文系(人文知)の畑を耕すことが社会脳研究という先端科学を育てる手だてである と信じている。これらの新領域の学問は上の図のように多様な側面から社会脳に光を当てることになろう。

 さて、科学(サイエンス)という言葉はラテン語の scientia に由来しており、これは知識を意味する。これに、con(集める)という接頭辞をつけると conscientia となり知識を集める意味になり、さらにこれは意識(consciousness)や良心(conscience)の語源ともなり、科学は社会に根差した営 為であることが示唆されている(苧阪 2004)。「社会脳」の新分野は21世紀の新たな科学の研究スタイルの革命をもたらし、広大な領域に成長しつつあるのである。社会脳は人文社会科学と自 然科学が協調しあって推進していく科学だともいえる。

 この「社会脳シリーズ」がめざすのは、脳の中に表現された社会の姿をあらためて人文社会科学の俎上にのせて、これを広く「社会脳」の立場から再検 討し、この近未来の新領域で新たな学術ルネサンスが開花する様子をスケッチすることである。社会脳のありようが人間とは何か、自己とは何かという問いに対 する答えのヒントになることを願っている。本シリーズが社会脳研究の新たな展開と魅力を予感させ、多くの読者がこの分野に興味を向けてくれることを期待し ている。

 社会脳の最近の動向を知りたい読者のためには、英文書籍ではあるが最近出版されたばかりの Decety & Cacioppo (2011)をはじめ、 Cacioppo, Visser & Pickett (2006)、Cacioppo & Berntson (2005)、Decety & Ickes (2009)、Harmon-Jones & Beer (2009)、Harmon-Jones & Winkielman (2007)、Taylor (2002)、Todorov, Fiske & Prentice (2011)や Zelazo, Chandler & Crone (2010) などが参考になろう(巻末文献欄を参照)。一方、本邦ではこの領域での理系と文系の溝が意外に深いため、本格的な社会脳関連の出版物がほとんどないことが 悔やまれる。

 なお、Cacioppo et al. (eds.) (2002) Foundations in Social Neuroscience では2002年以前に、また Cacioppo & Berntson (eds) (2005) Social Neuroscience には2005年以前に刊行された主要な社会神経科学の論文がまとめて見られるので便利である。

 社会神経科学領域の専門誌として、2006年から Social Neuroscience (2006─ )や Social Cognitive and Affective Neuroscience (2006─ )の刊行が始まっている。なお、日本学術会議「脳と意識」分科会(http://www.social-brain.bun.kyoto-u.ac.jp /)でも2006年から社会脳を多くのシンポジウムで取り上げてきた(その講演をもとに書き下ろしていただいた原稿も本シリーズに含まれている)。

【社会脳シリーズ】

1 社会脳科学の展望─脳から社会をみる(本書)

  以下続刊
 ・社会意識を育む脳─神経哲学と神経倫理学

 

・美しさと共感を生む脳─神経美学

 

・報酬を期待する脳─神経経済学

 

・注意を制御する脳─神経注意学

 

・小説を楽しむ脳─神経文学

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2012年3月29日 (木)

新刊 高橋修 著 主題としての〈終り〉

9784788512832 高橋修 著
主題としての〈終り〉
――文学の構想
12.03.23
978-4-7885-1283-2
四六判288頁・定価 本体2600円+税の見本が出来ました。
配本日は3月29日です。書店さん店頭には、2,3日後届くかと思います。


           著者関連書(弊社
           金子明雄・高橋修・吉田司雄 編 『ディスクールの帝国』

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広告 12年3月29日付 朝日新聞サンヤツ

Adt201203280009 12年3月29日付 朝日新聞サンヤツ掲載いたしました。
(大阪、名古屋、西部本社版 3月31日掲載)

掲載書籍は下記の通りです

懐疑を讃えて P・バーガー、A・ザイデルフェルト
開発空間の暴力 荻野昌弘
社会脳科学の展望 苧阪直行
社会・文化に生きる人間 氏家達夫・遠藤利彦 責任編集
編む 中村桂子 編

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2012年3月28日 (水)

イベントのご案内 イタリアブックフェア2012@イタリア文化会館 3/29-4/9

イタリアブックフェア2012のお知らせ

イタリアに関する書籍、イタリア語からの翻訳書の近刊をまとめて紹介しようとはじめたイタリアブックフェアも今年で4回目をむかえ、春の恒例イベントとな りました。今年は2009年以降に出版された書籍を中心に約700冊を展示し、そのほとんどを販売する一方、要望の多かったイタリア語の本の販売点数を増 やします。

2012年3月29日から4月9日 11:00から18:00 入場無料
会場 イタリア文化会館エキビジョンホール
主催イタリア文化会館 後援:イタリア政府観光局(ENIT)、公益財団法人日伊協会

弊社より『違和感のイタリア人文学的観察記 』(新曜社)
続編『しがらみ社会の人間力 現代イタリアからの提言』(新曜社) を刊行いたしました

八木宏美先生(元トリノ大学大学院契約教授)による自著の紹介もございます。
4月7日(土)11:10-12:00 場所:B1F 視聴覚室

ブックフェア詳細は下記サイトまで
イタリア文化会館

ほかお問い合わせは
イタリア文化会館図書室
Email:biblioteca.iictokyo@esteri.it  電話03-3264-6011(内線23)

特別展示
プリーモ・レーヴィ ―アウシュビッツを考えぬいた作家―
協力:立命館大学国際平和ミュージアム

【監修者講演会】 2012年4月3日(火)18:30 イタリア文化会館 アニェッリホールホワイエ 講師:竹山博英(立命館大学文学部教授) 

同時開催
著者・翻訳者による本の紹介

★原基晶(イタリア文学者) 
4月1日(日)15:00-16:00 場所:B2F ホワイエ
『チェーザレ ――破壊の創造者――』(講談社既刊8巻、惣領冬実著・原基晶監修)

★金沢百枝(東海大学文学部准教授)
4月6日(金)18:30-19:30 場所:B2F ホワイエ
『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』(新潮社)
『イタリア古寺巡礼 フィレンツェ→アッシジ』(新潮社)*両著とも小澤実氏との共著。

読み聞かせ
『冒険作家ジェロニモ・スティルトン』(講談社)

4月1日(日)11:00-11:30/14:00-14:30   場所:B2F ホワイエ 

全世界で6000万部のイタリア生まれのベストセラー作品を、訳者による読み聞かせや、クイズなどで楽しみます。

イタリアPOPSスペシャル
MC:磐佐良雄(イタリア音楽愛好家) 4月7日(土) 場所:B2F ホワイエ  
★13:00‐14:30 イタリア最新ヒット曲コーナー 
★15:30‐17:30 イタリアPOPSを一緒に歌ってみましょう

販売コーナー
■日本語の本 ■イタリア語の本 ■CD、DVD ■バーゲンコーナー
販売担当:紀伊國屋書店新宿南店, イタリア書房, タクト   

など盛りだくさんの内容です。

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2012年3月27日 (火)

新刊 陳 天璽・近藤 敦・小森宏美・佐々木てる編著 『越境とアイデンティフィケーション』

9784788512757 陳 天璽・近藤 敦・小森宏美・佐々木てる 著
越境とアイデンティフィケーション
――国籍・パスポート・IDカード
12.03.22
978-4-7885-1275-7
A5判488頁・定価 本体4800円+税

見本が出来ました。26日配本です。書店さん店頭には2,3日後の予定です。

            

《本書あとがきより抜粋》
・・・・・・共同研究会のメンバーとともに議論を重ね、各々執筆を行ってから、本書がこうして出版されるまで、予想以上に時間がかかってしまったというのが率直な感 想である。編集作業をしている間、二〇一一年三月一一日に未曽有の東日本大震災が発生し、二万人にも及ぶ死傷者と行方不明者を生み出した。人と街を呑み込 む黒い津波の恐ろしさは今も脳裏に焼き付いている。行政やライフラインは麻痺し、多くの人が困惑した。漁港で働いていた外国人労働者(いわゆる「研修 生」)も津波の被害に遭った。留学生や在留外国人たちのなかには海外で心配する親族に説得され一時帰国した者もいる。東京入国管理局には、避難に急ぐ人々 が出国に必要な再入国許可を申請するため長蛇の列ができ、交通整理に多くの人員を要したほどである。一方、もちろん日本に留まった者も多い。有効なパス ポートがない難民や無国籍者たちのなかには避難よりも「救援したい。東北にいく」と炊き出しや瓦礫清掃をしに東北に向かった者もいる。また、放射線被ばく を逃れるため多くの大規模な人びとが移動した。

 国によっては飛行機をチャーターし、自国民の避難(帰国)援助を行った大使館もある。その救援事業に携わったをした大使館職員によると、震災後、しばら く電話が鳴りやまなかったというそうだ。なかには、「私は○○人です。いまは、帰化をしたので○○国籍ではないが、家族はみな○○にいる。故郷に帰るため 飛行機に乗せてください」と懇願する者もいたそうだ。アイデンティティをとるべきか、アイデンティフィケーションをとるべきか、もしくは、いずれも問わず 救助すべきか、対応に苦渋したという。

 非常事態における人の越境とアイデンティフィケーションには、いかなる力学が働くのか、あらためて考えさせられる。
 天災で受けたショックもあってか本書の編集作業が頓挫した時期もあるが、むしろ、この天災があったことで、あらためてアイデンティフィケーションの重要 性を再確認させられ、研究成果をしっかり世に問わねばならないと背中をおされた気もする。身分証明が越境する人々の人生とアイデンティティにどのような影 響を与えるのか。生きる上でのさまざまなライフステージ、そして震災など非常事態をも視野に入れ、国立民族学博物館では、新たな共同研究会「人の移動と身 分証明の人類学」が走り始めている。これまでの国籍とパスポートを中心とした研究の蓄積をもとに、さらに研究を掘り下げ、さまざまな身分証明書が生身の人 間を守っていくために果たす役割を検証しようと考えている。・・・・・・

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2012年3月26日 (月)

新刊 苧阪直行 著 『社会脳科学の展望』

9784788512818苧阪直行 著
社会脳科学の展望
――脳から社会をみる

12.03.25
978-4-7885-1281-8
四六判336頁・定価 本体2800円+税の見本出来ました
配本日は3月26日、書店店頭には2,3日後です。

社会脳といえば、先日の日本発達心理学会で東京大学出版会さんの千住 淳著『社会脳の発達』が話題になってました。

本書をぱらぱらながめていて(性格の悪い自分としては)個人的に興味深かったのが、「他人の不幸は蜜の味 妬みと他人の不幸を喜ぶ気持ちの脳内メカニズム」の章。この格言の説得力も今後違ってきますね。

「社会脳シリーズ」刊行にあたって   苧阪直行

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2012年3月22日 (木)

新刊 J・ ヴォークレール 著 『乳幼児の発達』

9784788512825 J・ ヴォークレール 著
明和政子 監訳/鈴木光太郎 訳
乳幼児の発達
――運動・知覚・認知
12.03.20
978-4-7885-1282-5
A5判320頁・定価 本体2800円+税の見本が出来ました。配本日は3月22日です。
書店さん店頭には26日頃並びます。

            

監訳者の明和政子先生の名前は先日新聞でお見かけしたなあと思い、調べるとありました。
「人の子は他者の顔色見て学ぶ 京大、チンパンジーと比較」
《西日本新聞2012年2月22日記事にリンクします》

Humans and chimpanzees attend differently to goal-directed actions
《元の論文 「nature communications」にリンクします 》

以下、訳者の鈴木光太郎先生のあとがきより引用いたします。

訳者あとがき

 本書は、Déloppement du jeune enfant: Motricité, perception, cognition (Paris: Èditions Belin, 2004) の全訳です。

 著者のジャック・ヴォークレール(Jacques Vauclair)は、現代フランスを代表する心理学者です。1947年にベルンに生まれ、スイスで教育を受けました。ジュネーヴ大学でジャン・ピアジェの薫陶を受け、大学院在学中から発生的認識論国際センターでピアジェの助手もつとめました。ピアジェは1980年に亡くなりますので、最後の弟子にあたります。1981年から1年半、ポスドク研究員としてアメリカのヤーキーズ霊長類研究センターで研究をおこない、その後フランスのマルセイユにある認知神経科学研究所で霊長類の認知の研究に従事しました。1998年からはエクサンプロヴァンスにあるエクス-マルセイユ大学(2012年1月にプロヴァンス大学より改称)で研究と教育に勤んでいます。現在の国籍はフランスです。彼のプロフィールや研究の詳細については、彼のHPでご覧いただくことができます(http://sites.univ-provence.fr/wpsycle/membres/enseignants/vauclair.html)。なお、本書の謝辞にも献辞にもあるアニー・ピオラ(Annie Piolat)さんは奥様で、エクス-マルセイユ大学の教授として、言語心理学の分野で著名な方です。おふたりには、共著もあります。

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2012年3月19日 (月)

◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第118号■

◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第118号■
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◇近刊情報
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3月下旬発売予定
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主題としての〈終り〉
──文学の構想力
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高橋 修 著
四六判上製288頁・定価2730円(税込)
ISBN 978-4-7885-1283-2 C1095
分野=文学評論・現代思想

◆〈終り〉をめぐるスリリングな論考

〈終り〉とは何でしょうか。小説はなぜ終るのでしょう。ひとは〈終り〉を仮構
することで世界を意味づけるとする著者は、〈終り〉にはさまざまなイデオロギ
ーがからみついており、テクスト内の論理だけでなく、その外部である時代の
想像力が深く関わっていると考えます。このような視点から、二葉亭四迷の『浮
雲』の中断的〈終り〉、自然主義小説の終らない〈終り〉、夏目漱石のオープン
エンディングな〈終り〉、村上春樹『ノルウェイの森』の特異な〈終り〉、探偵
小説の〈終り〉など、さまざまな〈終り〉を主題化し、〈終り〉をめぐる人々の
欲望を、テクストのおかれた場所から読み解いていきます。


3月下旬発売予定
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検閲・メディア・文学
──江戸から戦後まで
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鈴木登美・十重田裕一・堀ひかり・宗像和重 編
A5判並製384頁・定価4095円(税込)
ISBN 978-4-7885-1284-9 C1090
分野=文学・思想史

◆日本における検閲を通史的に論じた初めての試み

言論弾圧や禁書は政治権力の歴史とともに古いが、それが高度に組織的になさ
れるようになったのは、印刷術の発達による大量出版とともにです。その徳川
時代の歌舞伎・戯作・浮世絵の検閲から始めて、戦前・戦中の国家主義のもと
での強圧的な検閲、そして敗戦後の占領軍による、検閲の痕跡を見せてはなら
ないとする検閲までのさまざまな検閲を取り上げ、いつ、なぜ、どんな法規や
制度がつくられ、どんなメディアやジャンルが対象となったか、規制はどのよ
うに受け入れられ、抵抗され、記憶され、忘却されてきたかを、ジャンル横断
的に通史的に、国内外の学者が論じます。そしてそれを、日本語版と英語版を
組み合わせたバイリンガル出版として、世界に発信していきます。




3月下旬発売予定
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学融とモード論の心理学

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サトウタツヤ 著
A5判上製320頁・定価3465円(税込)
ISBN 978-4-7885-1285-6 C1011
分野=心理学・科学論

◆「学際」から「学融」へ!

学問は基礎的研究も重要ですが、環境問題やエネルギー問題、さらにはいじめ
やマインドコントロールまで、異分野の専門的英知を結集して取り組まなけれ
ばならない問題が山積しています。学問の垣根を越えた協力は「学際」研究と
言われてきましたが、同じ問題をそれぞれが研究する域を出られませんでした。
「学融」は、現実の問題の解決をはかるための知識生産の結集をいいます。そし
て「モード論」は、そのような実践をささえる枠組みです。本書はモード論の
視点とその意義を解説し、心理学と法、医療、教育、自然科学の学融の取り組
みを具体的に報告します。著者は、立命館大学教授。



4月上旬発売予定
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ヒトはなぜほほえむのか
──進化と発達にさぐる微笑の起源
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川上清文・高井清子・川上文人 著
四六判並製176頁・定価1680円(税込)
ISBN 978-4-7885-1286-3 C1011
分野=発達心理学

◆ほほえむ胎児、笑う動物

ヒトは、進化の過程で微笑を獲得した数少ない動物のひとつです。「微笑」と
「笑い」をめぐる研究はダーウィンにさかのぼります。以来、表情評定法による
研究、チンパンジーの表情とヒトの微笑・笑いとの関係、ネズミなどの哺乳類
も笑うのか?など多様な切り口で探究が続けられてきました。最新のデータで
は、お腹の中で胎児はほほえみ、生後間もない赤ちゃんも睡眠中に声をだして
笑うことがわかっています。著者たちは、こういった自発的微笑、自発的笑い
の観察を通して、新たな事実をいくつも明らかにしてきました。微笑研究の歴
史を概観しながらその最前線までをわかりやすく紹介、微笑の謎に迫ります。



4月上旬発売予定
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コミュニティ臨床への招待
──つながりの中での心理臨床
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下川昭夫 編著
A5判並製320頁・予価3570円(税込)
ISBN 978-4-7885-1288-7 C3011
分野=臨床心理学・コミュニティ心理学・ソーシャルワーク

◆「つながりにくい人」とつながるために

一昨年には「無縁社会」、そして東日本大震災を経た昨年は「絆」という言葉
が社会的に注目されましたが、心理的支援を本当に必要とする人たちは、往々
にして専門家の手の届かない、つながりのネットワークの外にいます。また、
学校・病院・施設など、各現場ではそれぞれのコミュニティに応じた専門家と
のつながりが求められています。つながりを持つためにはどうすればよいのか
? 作られたつながりを活かしてどんな支援を展開することができるのか? 
本書は実践の積み重ねを通して見えてきたそのプロセスを「コミュニティ臨床」
という新しいアプローチとして集約し、豊富な実践例とともに紹介しています。



4月上旬発売予定
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消費者の信頼を築く(仮題)
──品質と取引の問題対策ハンドブック
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谷みどり 著
四六判並製212頁・定価1995円(税込)
ISBN 978-4-7885-1287-0 C1036
分野=社会・経営・法律

◆正直者が得をする市場を目指して

3・4兆円。これは2008年度国民生活白書が推計した消費者被害にともな
う経済的損失です。品質の怪しい安売り商品と悪質な業者ばかりの市場では、
今以上に経済が冷え込んでしまいます。消費者が安心して取引できる信頼感の
ある市場はどうすれば守れるのでしょうか。この問いに応えるため、行政・司
法・民間のそれぞれの立場からできるさまざまな対策を整理できるハンドブッ
クが誕生しました。消費者法や消費者政策に関心のある方、生産・流通に関わ
る全ての方に向けて、国際取引時代の問題、多くの事例と対策の有効性を総合
的に分析したハンディな一冊です。著者は経済産業省消費者政策研究官。



4月下旬発売予定
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キーワードコレクション 心理学 改訂版

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重野 純 編
A5判上製460頁・予価3780円(税込)
ISBN 978-4-7885-1290-0 C1011
分野=心理学

◆大型増補!

1994年の刊行以来、18年にわたって重版を重ねてきた『キーワードコレク
ション 心理学』の、待望の改訂版。この間、心理学は大きな進化を遂げ、隣接
諸科学との連携が進められ、専門領域が広がり、新しい研究法が取り入れられ、
科学としての地位を強固なものとしてきました。このような心理学の発展を反
映して、改訂版では新たに20項目を追加し、参考文献も最新のものを紹介する
ようにしました。既存の項目も全体にわたって記述をより分かりやすいものに
なるよう改良し、新項目を含めて全項目間の統一を図っています。旧版同様、
大学院受験、各種資格試験の必須参考書として、おすすめください。編者は、
青山学院大学教授。



4月下旬発売予定
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ワードマップ 状況と活動の心理学
──コンセプト・方法・実践
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茂呂雄二・有元典文・青山征彦・伊藤 崇
香川秀太・岡部大介 編
四六判並製320頁・予価2730円(税込)
ISBN 978-4-7885-1291-7 C1037
分野=心理学・教育学・社会学

◆心理学のホットなテーマがワードマップに! 

人のこころの営みは、社会、文化、そして歴史という状況に関係づけてはじめ
て理解できます。私たちのこころは、人々、対象物、道具、記号を媒介にして、
社会、文化、歴史、状況のエコロジーの中に織り込まれた絢模様ともいえるで
しょう。それを理解するには、状況から始めるしかありません。本書は、この
ような考え方を、関連する研究領域を含めて多方面から解説することを企図し
て、社会文化的アプローチ、状況論、文化歴史的アプローチ、活動理論などと
さまざまに呼ばれてきた心理学のアプローチの成果を、日本の代表的な研究者
が結集してまとめあげました。心理学ばかりでなく、社会学や教育、医療など、
隣接分野にとっても待望の一冊です。



4月下旬発売予定
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雇用不安時代の男性意識『揺らぐ男性のジェンダー意識
──多元化する仕事、家族、ジェンダー
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目黒依子・矢澤澄子・岡本英雄 編
A5判上製250頁・予価3675円(税込)
ISBN 978-4-7885-1289-4 C1036
分野=女性・社会学

◆男性意識のゆくえ 

雇用不安が進むなかで男性たちの意識はどのように変わっているのでしょうか。
本書は東京在住、20~40代の男性1500人を調査し、仕事、家族、ジェンダ
ー、介護意識を探りました。職業、年収、正規・非正規、既婚・未婚によって
意識が多元化し、「男は仕事、女は家庭」のジェンダー分業派が減り、稼ぎ手
として子育てと介護も担い、妻の収入も期待するワークライフバランス派が目
立つなど、興味深い意識の変化が見られます。著者は江原由美子首都大学東京
教授、山田昌弘中央大学教授など、この分野の第一人者揃い。

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◇奥付
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次回発行は2012年4月中旬を予定しております。

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2012年3月16日 (金)

新刊 荻野昌弘 著『開発空間の暴力』

9784788512696 荻野昌弘 著
開発空間の暴力
――いじめ自殺を生む風景
12.03.20
978-4-7885-1269-6
46判256頁・定価 本体2600円+税の見本が出来ました。配本日は16日。書店さん店頭には21日頃でしょうか。

開発空間の暴力 あとがき

一九九四年のことだから、今から一五年以上前のことである。その年、テレビで相次いで起こるいじめ自殺の報道を見ながら、私は、ひとつのことに気がつい た。事件が起こるたびに、テレビに映し出される中学校の映像に、共通点があるように感じたのである。それは、いじめ自殺が起こる中学校の周辺に広がる風景 に、共通の要素があることを意味する。いじめ自殺を生み出してしまう固有の風景があるのではないか。これが、私がテレビを見ながら抱いた直感である。

そこで、私は同じ年の一二月、実際にいじめ自殺事件が起こった直後の愛知県西尾市に赴いてみた。《つづきを読む》

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2012年3月14日 (水)

新刊 P・バーガー、A・ザイデルフェルト 著 森下伸也 訳『懐疑を讃えて』

9784788512795 P・バーガー、A・ザイデルフェルト 著
森下伸也 訳
懐疑を讃えて
――節度の政治学のために

12.03.09
978-4-7885-1279-5
46判216頁・定価 本体2300円+税
の見本が出来ました。配本日は15日です。書店さん店頭には2,3日後となります。

 訳者あとがき

 本書はPeter L. Berger and Anton C. Zijderveld, In Praise of Doubt : How to Have Convictions without Becoming a Fanatic (New York : HarperOne, 2009)の全訳である。書名を直訳すれば『懐疑を讃えて――いかにすれば狂信家となることなく確信をもてるか』とでもなるが、いささか長すぎるサブタイトルを、内容の理解に資するであろう短いフレーズに入れ替え、『懐疑を讃えて――節度の政治学のために』とした。
 「謝辞」にあるように、本書はピーター・バーガーがアントン・ザイデルフェルトを共著者に迎えて書いた本である。二人の人物を紹介しておこう。
 まずはバーガー。社会学を少しでもかじったことのあるひとならだれでも知っている、現存する社会学の最高の巨匠のひとりである。一九二九年にオーストリアのウィーンに生まれ、第二次大戦後まもなくアメリカへ移住、ニュースクール・フォー・ソーシャルリサ―チに学んで社会学者・神学者となった。一九九九年までボストン大学教授をつとめ、現在は同大学名誉教授となっているが、いまでも同大学文化・宗教・国際問題研究所の上級研究員の地位にあり、現役時代と同じ研究室にいるそうである。

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2012年3月13日 (火)

新刊 日本質的心理学会編 『質的心理学研究 第11号』 

9784788512764 日本質的心理学会 編
『質的心理学研究 第11号』 
――特集 特集 病い、ケア、臨床
12.3.20
978-4-7885-1276-4
B5判228頁・定価 本体2800円+税の見本が出来ました。
配本日は3月12日です。書店さん店頭へは2,3日後にお届けです。

会員様への発送は本日13日にいたしました。

質的心理学研究バックナンバー

 

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2012年3月12日 (月)

新刊 日本発達心理学会 編 氏家達夫・遠藤利彦 責任編集『社会・文化に生きる人間』

9784788512771 日本発達心理学会 編
氏家達夫・遠藤利彦 責任編集
社会・文化に生きる人間
――発達科学ハンドブック5
12.03.14
978-4-7885-1277-1
A5判360頁・定価3990円 の見本が出来ました。配本日は3月12日。書店さん店頭には2,3日後となります。

発達科学ハンドブックについて

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2012年3月 5日 (月)

新刊 中村桂子 編 JT生命誌研究館発行『編む』

9784788512726 中村桂子 編
JT生命誌研究館発行・新曜社発売 
編む
――生命誌年刊号 vol.65-68
A5判278頁 定価 本体1905円+税
12.02.29  978-4-7885-1272-6

の見本出来ました。配本日は2月28日。絶賛発売中です。

            毎号凝りに凝った装丁の本書ですが、今号は「編む」にちなんだ「おまけ」ついております。手にとってお確かめいただけたらと思います。

 子どもの頃編み物が好きでした。太平洋戦争中と戦後ですから、毎年母がセーターをほどいて少し大きく編み直してくれていました。時には染め直して新しい 色にしたり、胸に犬の模様を編みこんでくれたり。洗い上がった毛糸の輪を両手にかけて、新しい玉を作っていく母の手元を眺めながら、今年はどんなセーター ができるかとわくわくした気持を今も覚えています。私は、少し古くなってしまった毛糸をもらって靴下を編むのです。何をやっても負けてしまう兄よりも上手 にできるのが嬉しくて得意になって編んだものです。

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2012年3月 2日 (金)

新刊 堂下 恵著『里山観光の資源人類学』

9784788512740 堂下 恵
里山観光の資源人類学
――京都府美山町の地域振興
12.02.29
978-4-7885-1274-0
A5判304頁・定価 本体4700円+税
の見本が出来ました。3月1日配本です。書店さん店頭には5日過ぎに到着。

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