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2011年6月 8日 (水)

新刊 山岸明子 著『こころの旅―― 発達心理学入門』

9784788512375 山岸明子 著

『こころの旅―― 発達心理学入門』

見本出来ました。配本日は6月7日。書店さん店頭には2,3日後ならびます。

ISBN 978-4-7885-1237-5
A5判184頁・定価 本体1900円+税
10.06.10

●あとがき

 本書は、かつて神谷美恵子氏が精神科医の立場からされたように、人間の発達の姿を「こころの旅」として示しながら、発達心理学のわかりやすい入門書とすることを意図して執筆された。発達心理学も他の科学と同様、実証的な検討をすることにより体系化されてきたものであるが、そのようなデータも使いつつ、それだけでなく発達心理学が明らかにしてきたことに合うような事例をできるだけ多く示すことによって、発達過程を生き生きとしたものとして描くことを試みた。その事例も必ずしも実際にあった「事実」だけではなく、文学作品や映画等のフィクションも含めた。それらの作品では発達心理学が明らかにしてきたことが心うつかたちで表現されていて、作家や監督の人間を見つめる目の確かさ、洞察の深さに改めて感じ入った。生身の人間の姿を通しての学習は、多数のデータから統計的に検討されたものによる学習とは異なった、印象的な学びになるのではないかと思う。

 本書は最先端の研究を取り上げることよりも、発達心理学において広く受け入れられ、現代社会の子ども・人間を理解する上で役にたつような研究をとりあげることを心がけた。書き終わって思うことは、人間の発達や心理に社会・文化の影響は大きい一方、文化によらず普遍的な部分も多いことである(コラムで取り上げた事例には戦争の時の事例や戦前のものもある)。もちろん社会の変化は著しく、生きる場も大きく変わり、現代に特有な問題も多いのは確かである。「現代社会における発達は以前とはこのように違う」「この理論はこの点で不適切である」ということに関心が向けられやすいが、普遍的な発達の過程やそれを体系化している理論もしっかり学んでほしいと思う。

 本文でも繰り返し述べたように、本書を通じて一番伝えたかったことは、人間がもつ発達の可塑性、限界はあってもそれを受け入れながら状況に応じて変化し続ける人間の姿である。長いこと大学教員をしていながら、卒論指導や研究指導をする機会もほとんどなく、次世代を育てるというエリクソンの生殖性課題を担うことの少ない成人期を過ごしてきたが、本書の執筆によりささやかながらその課題を担うことができたように感じている。本書を通じて発達心理学の基本的な知見を学ぶと共に、発達心理学の人間観・発達観への理解も深めて、これからのご自分や他者とのかかわりに生かしていただければ幸いである。

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