書評 『出口のない夢』 クラウス・ブリンクボイマー 著
クラウス・ブリンクボイマー 著
渡辺一男 訳
『出口のない夢』
が日本経済新聞 6月6日 2010年付「欧州目指すアフリカ人の苦闘」として書評掲載されました。評者は宮島喬氏。
掲載紙ご担当者様、評者の先生に心よりお礼申し上げます。
・・・・・・ところで、アフリカの貧しさとは何か。飢饉や飢えもあるが、学校で学び電子技術も身に付けたが国にはまるで仕事がない、子どもの学校を続けるにも毎月200ユーロの送金がないとすぐに授業料が払えなくなる、といった、グローバル化の所産である情報化、都市化、市場化を映す悲惨なのである。そして本書は書く。各国家はこの現実に対し何もなしえていない。賄賂、不正、権力の私物化、一族郎党の利益以外になんの公共的連帯感もないこと、というアフリカ政治社会パターンはどこでも救いようがない、と。
では、絶望する以外にないのか。本書はこれに回答を与えていない。ヨーロッパやそのほか先進国はアフリカへの援助の名の 下、これまで借款や無償援助を与え、テクノロジーを提供し、一応空港や道路、学校や病院も建設した。しかし、本当に伝え、援助し、育てることを怠ったもの はなんだったのか、と問うてみる必要がある。
最近NHKスペシャルで3回にわたり、アフリカンドリームと題した番組を放映していた。とてもいい番組だった。弊社の『出口のない夢』を読んだあと
にこの番組を観た私は、多少救われた気持ちになった。そこには自分たちの力で仲間や、村や、そして国を少しでも良くしようと努力している人たちがいたから
だ。そしてそれこそが「政治」なのだと、思った。
同じ「夢」を冠しているけれど、本書にはそんないい話は出てこない。政治の不在。そのおそろし
さ。
そんな明るくない本をぜひ読んでほしいのは、本書があるかもしれない日本の近未来を描いているように思えるからだ。難民の流入を阻むために日本海沿 岸に鉄柵をはる日はそう遠くない気がする、見えない鉄柵はすでにはられている。(N)
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