書評 小熊英二著『1968』
小熊英二著『1968』の書評が2009年10月4日付朝日新聞に掲載されました。評者は天児慧氏。評者の先生、掲載紙ご担当者の方には深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
「・・・・・・しかし全共闘運動がなぜ党派を超え巨大なうねりになったのか。そこにはある種の「感性の共有」があった。評者も含め多くの無党派、一般学生は党派にかかわることを躊躇った。しかし『青春の墓碑』で自殺に至るまでの闘いと人間としての苦悩を綴った活動家・奥公平や羽田闘争で轢死した京大生・山崎博昭の生きざまは多くの共感を引き起こしたと著者は語る。悲惨な「死」を選択しなかった者は、「沈黙」を選択せざるをえない。時代の流れに合わせ「沈黙」を続けることは、感性の摩耗と背中合わせになる。摩耗してもしなくても、中途半端な生きざまに映る。・・・・・・あれから40年が過ぎた。あの運動が何を生みだしたのか。著者はその後、団塊世代が「大衆消費文化の作り手として活躍している」ことに触れている。しかし全体としてどう見たらいいのか。本書では最後に。「私には何もないの」という序文の少女の言葉に戻っているが、今日ようやく見え始めてきた部分もある。・・・・・・」
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