新刊 山 泰幸 著 『追憶する社会』 三浦耕吉郎 著 『環境と差別のクリティーク』
山 泰幸 著
『追憶する社会』
――神と死霊の表象史
09.4.30
978-4-7885-1150-7
46判232頁・定価2100円(税込)
◆伝説はいかに生成するか◆
貨幣経済の浸透によって民俗社会は解体したかというと、けしてそうではありません。江戸期から異人殺しの昔話や伝説が各地で語られ、さまざまなバリエーションが生まれたことに、著者は注目します。神や死者の霊という観念は近代化によって破棄されるのではなく、死霊の伝説、フォークロアを取り込むことで近代社会は再編成され、現在もそれが続いていると説きます。このような「追憶する社会」の起源を探ることは、「千の風になって」「おくりびと」のヒットに表れているように、死者の霊を慰め、その思いを抱えて生きる私たちの〈生〉の現在を映し出してくれます。
三浦耕吉郎 著
『環境と差別のクリティーク』――屠場・「不法占拠」・部落差別
09.4.30
978-4-7885-1149-1
A5判232頁・定価2310円(税込)
◆見えない対象を書く技法◆
屠場つまり食肉センター(牛や豚を屠畜・解体して食肉を生産する工場)は環境を悪化させる迷惑施設であるという周辺住民の建設反対運動から、著者の被差別部落の調査は始まりました。「そんなこと聞いてどうするん」という調査拒否と沈黙に真摯に向き合い、対話困難な相手から深い語りを導いた調査の過程が、手紙やエッセイのスタイルでいきいきと描き出されます。著者は〈批判的ソシオグラフィ〉を編み出して聞き取りを重ね、被差別の生活文化を掘り起こしてきました。〈構造的差別〉を支える規範の正体に迫るとともに、環境と差別の見えない絡み合いを解きほぐそうと試みています。
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